妊娠中に無性に食べたくなるものの一つが、お寿司ではないでしょうか。「生魚は避けるべき」という情報は知っていても、「何がダメで、何が安全なのか」という具体的な判断に迷う妊婦さんは少なくありません。
この記事では、厚生労働省や食品安全委員会が公表している情報を根拠(エビデンス)とし、妊娠中に避けたい魚介類のリスクとその具体的な摂取目安を解説します。正確な知識をもって、安心安全にマタニティライフを送りましょう。
1. 妊娠中に生魚・寿司を避けるべき主な3つの理由
妊娠中に生魚の摂取が制限されるのは、胎児への影響や母体の健康リスクが高まるためです。主なリスクは以下の3点です。
1-1. メチル水銀による胎児の中枢神経への影響
一部の大型魚や深海魚には、食物連鎖によって濃縮されたメチル水銀が含まれています。メチル水銀は胎盤を通過し、胎児の中枢神経の発達に影響を及ぼす可能性があります。
厚生労働省では、妊娠中の女性に対してメチル水銀の摂取を抑えるよう呼びかけており、魚介類の種類によって摂取量の目安を設けています。
1-2. 重症化リスクが高い細菌性食中毒(リステリア菌・腸炎ビブリオ)
妊娠中は免疫機能が低下しやすいため、食中毒にかかると重症化しやすい傾向があります。
特に注意が必要なのが、リステリア菌です。リステリア菌は冷蔵庫の低温でも増殖し、生の魚介類や非加熱のスモークサーモン、ナチュラルチーズなどに潜むことがあります。妊婦がリステリア菌に感染すると、**流産、早産、胎児への感染(髄膜炎など)**を引き起こす危険性があるため、食品安全委員会も摂取を強く控えるよう推奨しています。
1-3. 寄生虫(アニサキスなど)感染のリスク
サバ、イカ、アジなどの生魚にはアニサキスなどの寄生虫が潜んでいるリスクがあります。通常、寄生虫は冷凍や加熱によって死滅しますが、生食の場合は感染リスクが避けられません。妊娠中に激しい腹痛や嘔吐を伴う食中毒にかかると、脱水や体力消耗により母体や胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
2. 【危険ネタ】水銀含有量に基づく避けるべき魚介類(厚生労働省の指針解説)
メチル水銀の摂取については、厚生労働省から具体的な魚種ごとの摂取制限が示されています。
魚は大きく「摂取を控えるべき魚」と「摂取量を制限すべき魚」に分けられます。
2-1. 摂取を控えるべき魚(高水銀群)
以下の魚種はメチル水銀含有量が特に高いため、妊娠期間中は摂取を控えることが推奨されています。
- キンメダイ
- メカジキ
- クロマグロ(本マグロ)
- サメ類
- エッチュウバイガイ
2-2. 摂取量を制限すべき魚と具体的な目安(週1~2回まで)
以下の魚種は、摂取量を制限することで食べることが可能です。
| 魚種名 | 厚生労働省推奨の摂取目安 |
| メバチマグロ | 1回約80gを週に1回まで |
| キダイ | 1回約80gを週に1回まで |
| マカジキ | 1回約80gを週に1回まで |
| キハダマグロ、ビンナガマグロ | 1回約80gを週に2回まで |
例: 寿司一貫あたり約10~15gとして計算すると、メバチマグロは週に5~8貫程度が目安となります。
深い洞察: マグロの中でも、ネギトロに使用されることが多いキハダマグロやビンナガマグロは比較的安全性が高いため、量を守れば食べやすい選択肢となります。

3. 【リステリア菌リスク】生魚以外で注意が必要なネタ
お寿司のネタには、生魚以外にもリステリア菌のリスクがあるものがあります。
- スモークサーモン: 製造過程で十分な加熱殺菌が行われていない場合があるため、生のスモークサーモンは避けるべきとされています。
- イクラ・筋子: 衛生管理が不十分な環境で漬けられている場合、リステリア菌や他の細菌が繁殖する可能性があるため、信頼できる店で新鮮なものを選ぶか、可能であれば避けるのが無難です。
4. 【安心ネタ】妊娠中に積極的に食べてOKな寿司ネタ一覧
メチル水銀含有量が極めて低く、または十分に加熱処理されているため、安心して食べられるネタを積極的に選びましょう。
| 安心カテゴリー | おすすめ寿司ネタ | 安全な理由 |
| 完全に加熱済み | 穴子(あなご)、えび(ボイル)、カニ(ボイル)、玉子焼き、ツナマヨ(加熱ツナ) | 加熱により細菌・寄生虫が死滅しており、水銀も問題ない。 |
| 低水銀魚介 | サーモン(養殖のアトランティックサーモン・トラウトサーモン)、アジ、サバ(酢締めでも一度冷凍処理されているもの) | 水銀含有量が非常に低い。ただし、鮮度の確認は必須。 |
| その他 | きゅうり巻き、かんぴょう巻き、納豆巻き、いなり寿司 | 生魚を含まず、栄養バランスも取れる。 |

5. 妊娠中にお寿司を食べる際の衛生管理の重要性(農林水産省の推奨)
どんなに安全なネタを選んでも、衛生管理が不十分では食中毒のリスクが高まります。農林水産省は食中毒予防の観点から、以下の点を推奨しています。
5-1. 鮮度の見極めと持ち帰りの際の注意点
- 鮮度: 新鮮なネタを選ぶことが大前提です。ネタの色やつやがないものは避けましょう。
- 持ち帰り寿司: 購入後はすぐに冷蔵庫に入れ、食べる直前に取り出してください。特に気温が高い時期は、購入から喫食まで時間がかかる持ち帰り寿司は避けた方が安全です。
5-2. 信頼できるお店の選び方
- 衛生管理: 清潔感があり、回転率が高くネタの回転が速いお店を選びましょう。
- オーダー制の活用: 回転寿司であっても、レーンを回っているものより、注文を受けてから握ってもらう**「オーダー制」**を利用することで、より新鮮なものを食べることができます。
6. まとめ:安全な知識を持って賢くお寿司を楽しむために
妊娠中にお寿司を食べたいという願いは、適切な知識と公的な指針を参考にすることで叶えることができます。
- 高水銀魚(クロマグロ、メカジキなど)は避ける。
- リステリア菌のリスクがある非加熱食品(スモークサーモンなど)は避ける。
- 加熱済みや低水銀のネタ(穴子、ボイルエビ、養殖サーモンなど)を選ぶ。
安全な知識をしっかりと身につけ、安心してマタニティライフを楽しみましょう。
【免責事項(Disclaimer)】
本記事は情報提供を目的としており、医師、薬剤師、管理栄養士などの医療専門家による診断や指導に代わるものではありません。妊娠中の食生活や体調についてご心配な点がある場合は、必ずかかりつけの産婦人科医にご相談ください。

